花粉症は、本来、我々の身体をウィルスなど外部からの異物から守るための免疫機能=リンパ系の仕組みが、無害であるはずの花粉にも過剰に反応してしまう事から生じます。
例えばかぜの場合、体内にウィルスが侵入すると、まずリンパT細胞がそのウィルスに関する情報をリンパB細胞に伝達し、リンパB細胞はこの情報を元にして抗体を作り出し、ウィルスを攻撃する事になります。
花粉症の場合もリンパB細胞が抗体を作りだすところまでは同じなのですが、抗体が直接、侵入した花粉を攻撃するのではなく、まず、目や鼻の粘膜等に分布する肥満細胞が抗体を受け取り、次に入ってくる花粉に対する準備を整えます。そして、再び花粉が侵入してくると、肥満細胞にくっついた抗体が反応して花粉をとらえ、ヒスタミンやロイコトリエンなど化学物質を放出する事になります。
ヒスタミンは知覚細胞を刺激して、くしゃみや鼻水、目のかゆみを起こし、身体の中の花粉を外に出そうとし、またロイコトリエンは血管を膨張させて鼻詰まりを起こし、花粉がこれ以上身体内部に入り込まないようにするのです。
花粉症に用いられる医薬品は、こうしたリンパ系免疫機能の仕組みの各局面に対応し様々なものがあり、一般用医薬品としては「抗ヒスタミン薬」や「血管収縮薬」等があります。
抗ヒスタミン薬は神経や血管のヒスタミン受容体に結合し、肥満細胞から放出されるヒスタミンによるアレルギー反応を抑制し、くしゃみや鼻水を抑えてくれます。
血管収縮薬は交感神経を刺激して鼻粘膜の充血や腫れを抑えるため、特に鼻閉に効果があり、単独ではなく、くしゃみや鼻汁には効果がありません。ちなみにこれと対照的なのが副交感神経に作用する抗コリン薬で、鼻閉には効果がないのですが、鼻汁を抑える効果に優れています。
その他、「塩化リゾチーム」や「グリチルリチン酸」等の消炎薬、漢方では鼻水を抑える「小青龍湯」や鼻閉を改善する「葛根湯加川芎辛夷」等が花粉症に用いられる代表的な薬剤になります。
これら医薬品は対症療法として急性症状を抑えるのですが、いわゆる健康食品の分野でも、抗原となる花粉を徐々に身体に慣らす“減感作”による体質改善に期待するもの、またシソ等の抗アレルギー性分含有の原材料によるものが製品化されており、有効性についての研究も進められています。