夏は野外で活動する機会が多くなる季節ですが、それにともなって虫さされに悩まされることも多くなります。虫さされは、虫にさされたために起こる皮膚の異常で正式には「虫刺症」(ちゅうししょう)といい、毎月5月半ばから10月半ばに集中して生じます。
いわゆる蚊の仲間は全世界に3,266種もいますが、そのうち血を吸う蚊の種類は全体の4分の3(約2,500種)、さらにマラリアをはじめ様々な病気を媒介するものは約300種です。日本に生息する蚊は約100種で、そのうち血を吸うものは約30種ですが我々がよく見かけ実際に刺されるものは、ほどんどがアカイエカとヒトスジシマカです。しかし、これら吸血性の蚊も血を吸うのはメスだけです。 しかも、通常はメスもオス同様、花の蜜や果汁、木や草の汁を主食としています。メスが血を吸うようになるのは卵巣を発達させ卵を産むためタンパク質が必要になる産卵期を迎えてからです。
蚊が媒介する恐い病気
マラリアは、亜熱帯や熱帯を中心に感染者は年間約3億人、死者150~300万人にも及びます。ハマダラカという蚊を媒介に感染し、数週間の潜伏期間の後発症、悪寒・頭痛・嘔吐・関節痛とともに高熱が続きます。日本でも現在は生活環境の改善とハマダラカの減少などによって1959年を最後に無くなりました。しかし、免疫を持つ日本人の減少や地球温暖化の進行などで、今後も再流行の可能性はあります。
デング熱も熱帯を中心に年間1,000万人が発病し、2~3万人の死者を出します。手足の皮診・高熱・関節痛・目の奥の痛み等が症状で、出血や重篤なショック症状が出る場合もあります。地球温暖化の影響か、流行は年々北上してきており、近年は台湾にまで迫っています。日本人には免疫がなく、また日本で最も普通に見られるヒトスジシマカが媒介する病気であることから、日本での流行が恐れられています。
ウエストナイル熱は元来アフリカの風土病でしたが、1999年から北米でも流行しはじめ2003年末までの全米患者数は14,163人、死亡者数は564人にも及んでいます。急激な発熱・頭痛・背部痛・めまい・発汗・また約半数の症例で紅い小丘が密生した発疹・リンパ節の腫れが出ます。
日本脳炎は感染したブタを刺した蚊がヒトを刺すことで感染します。媒介となるのはコガタアカイエカで感染者のうち300~3,000人に1人が発症すると言われています。日本では昭和30年代に毎年500~1,600人程度の死亡者がありました。現在では毎年10人以下で発症者、死亡者も0~数人ですが、回復しても多くの人に重篤な後遺症がみられるため、予防接種が勧められています。
O型の人は蚊に好かれる?
血液型がO型の人は他の血液型の人に比べて、蚊に刺されやすいという説があります。確かに血を吸った蚊の腸内や腕にとまる蚊の数を調査した研究によるとO型,B型,AB型,A型の順で刺されやすかったという報告があります。しかし本当でしょうか?蚊が人に近づいてくるのは、人間が呼吸によって吐き出す二酸化炭素・体温による熱・汗など分泌物の臭いを感知してのことです。お酒を飲んだ人(吐息に含まれる二酸化炭素濃度が高くなる)や、汗っかきな人・体温の高い子供などが蚊にさされやすいのはこのためです。そして、蚊は25~35メートル離れていてもそれらを感知可能なのだそうです。
O型の人が蚊にさされやすいとする説の中には、その理由として「糖鎖」といわれる血液成分の1つがO型では花の蜜によく似た分子構造となっており蚊がこれを感知するため、というものがありますが、、さすがの蚊も刺す前に本当にそこまで感知しているかどうかは疑問です。また仮にそこまで感知可能だとしても、蚊にとって花の蜜を吸う行為と血を吸う行為は全く別物のはずです。そんなに花の蜜に惹かれるなら、血を吸うよりも単に花の蜜を吸うはずなのですが・・・。いずれにしろ、実際にはO型以外でも良く蚊に刺されるという人はいますし、O型でもあまり刺されないという人もいますから、蚊にとって血液型以外にもいろいろな ”選択基準”があるのでしょう。